【ドローン規制】航空法施行規則改正パブリックコメントを提出しました

パブリックコメント


先日の航空法改正に伴いドローン等の無人航空機に関する規制を具体的に定義する航空法施行規則案に対するパブリックコメントを個人として提出しました。

この施行規則案がこのまま規定されますと日本国内でマルチコプター等のドローンを飛ばすことは大変難しくなり本Webサイトで扱っているFPVを使用したドローンやそのレースに関しても大きく制限されることとなります。

募集要項では電子メール、郵送またはFAXで提出することとなっていますが下記サイトからリンクされるWebフォームからの提出も受け付けられるようです。(電話にて確認しました。)

 

「航空法施行規則の一部を改正する省令案等に関する意見募集について」パブリックコメント募集

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155151218

以下に私が提出した意見を掲載しておきます。Webフォームからのコメントの提出は2000文字の制限があるため(1/5)から(5/5)まで5つに分割した上で提出しました。

パブリックコメントは明日15日まで受け付けていますので、ぜひ多くの方に意見を提出していただければと思います。

2015年10月14日11:50提出意見

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意見(1/5)

<総論>

マルチコプターを中心とする無人航空機の関連技術は急速な開発と普及が行われている段階にあり、その技術及び用途についても未だ未確定の状態にあります。今回の省令で定義される無人航空機についても数百グラムのものから数十キロまたはそれ以上のものまで含まれますが、このような多様な無人航空機の形態、幅広い適用技術や用途、将来の発展活用可能性を十分に考慮されているとは言い難く、過度な制限は今後の同分野の技術発展や利活用を大きく阻害することとなると考えられます。将来適正な形への航空法自体の再度の改正することが必要と考えますが、定められた法の範囲内において省令を制定するにあたってはその悪影響の範囲を最低限に留めるよう規定すべきと考えます。

省令の制定にあたっては産業応用等に対する配慮が行われたと推察されますが、現時点での無人航空機の国内市場はまだまだ萌芽的段階にあります。世界的に無人航空機の大きな市場としては軍事関連を除けば、玩具や趣味、レースなどホビー市場、動画・静止画等の撮影用途が主なものであり、まずはこれらの領域で普及や利活用の幅を広げていくことが、今後の本格的な無人航空機の活用と市場拡大には不可欠だと考えます。

特に今回の省令案の内容では一般の個人利用者が休日に趣味などで無人航空機を飛行させたり動画撮影に使用したりすることについて多大な制限と負担を強いる内容となっており、海外で広く普及が進んでいる個人での無人航空機の利用が日本国内では大変難しくなり、この分野での市場が縮小されます。

また無人航空機開発の分野では個人利用者の貢献によるオープンソースソフトウェアやハードウェアを用いた技術発展が目覚ましく、日本の技術者の貢献も少なくありません。今回の省令案がそのまま規定されますと、今後こういった動きを抑制することとなり、新たな技術開発の可能性も閉ざされる可能性が高くなると考えます。以下、省令案及び許可・承認申請書案に関する内容についての各項目に対する意見を記述します。

 

「航空法施行規則の一部を改正する省令案」についての意見

 

<無人航空機の対象>

「無人航空機から除くものを、重量が 200g 未満」とされていますがこの基準重量が軽すぎるために除外対象となるものが限定され、過剰規制になると考えます。海外を含め無人航空機が実際に人及び物件の安全を損なった事例の多くが数kg以上の機材を使用しているケースであり、無人航空機から除くものの重量を1000g未満とすることが妥当であると考えます。1000g未満程度の機体であれば人及び物件の安全を損うことなく、趣味程度の利用や各種技術開発や応用に必要な最低限の機能を実装することが可能となり、安全を維持しながら一般市民の無人航空機の利活用や技術開発のための各種試行が阻害される範囲を最低限のものとすることができると考えます。

 

<人又は家屋の密集している地域>

無人航空機の飛行が禁止される「人又は家屋の密集している地域」の定義単位が大きすぎます。「人又は家屋の密集している地域を、国勢調査の結果による人口集中地区と定めることとする。」とされていますが、市街地に存在する家屋の庭や学校の校庭等、同一地区内に安全に飛行できる場所があったとしても一律に飛行が制限されることとなります。特に自宅や企業の敷地内において自宅等の建物の高さよりも低い高度で飛行させることを禁止とする合理的な理由はないと考えます。

地域が人又は家屋の密集している地域に該当すれば、自宅の庭や企業等の敷地など広くて安全を確保しながら無人航空機を飛行させることができる環境があったとしても飛行禁止となり、飛行させるには申請による許可取得が求められることは柔軟な無人航空機の利用を阻害する要因となります。

このような状況を回避するためには人又は家屋の密集している地点を一律に地域としてまとめるのではなく、個別に地理的な範囲を細かく定義するか、それが難しい場合は私有地等において土地所有者や管理者が認める場合は一定高度までの飛行を禁止対象から除外することが望ましいと考えます。

 

(意見2/5)

<人又は物件から保つべき距離>

人又は物件から保つべき距離として示されている30mという距離は大きすぎます。無人航空機を人や樹木等を含む物件から30m以上離して飛行させることは、無人航空機の種別や利用形態によってはかえって危険な状態を生み出します。この条件を満たして無人航空機を飛行させるには移動する各地点において直径60m以上の人や物件がない空間を確保するか、物件から相対高度30m以上を確保して飛行する必要が生じますが、無人航空機にとって高度を高くとることは、操作者と無人航空機の距離が離れることとなり、操縦者が機体を見失ったり機体の進行方向がわからなくなったりする危険性や、上空の突風に煽られる危険性、通信状態悪化による操縦不能のリスク、またトラブル時に遠方まで飛んで行ってしまうなど、かえって危険を増やす要因ともなります。特に初心者のうちは安全確保のためにいきなり高いところに飛ばすのではなく、樹木や塀に囲まれた場所で比較的低い高度で狭い範囲で飛行練習をしたりすることは一般に行われています。また玩具等として販売されている小型軽量な無人航空機や初心者が操縦するような場合については、30mもの高い高度や距離をとるよりも、十分視認しやすく不具合があればすぐに着地できる低い高度や距離(人や物件に対して近い距離)で飛行させた方がよほど安全であることが多いと考えられます。

無人航空機の適切な飛行高度や人や物件との距離は機体のサイズや機能、性能、風の状態、操作者の技量などによって変わるものであり一律に30mもの高度や人、物件からの距離をとることを申請不要の条件とすることは危険な飛行状態を生むことにつながります。

また現在、世界各地ではドローンを用いたレースなどが盛んに開催されており今後より本格的なプロスポーツとしての展開なども検討されています。このような流れを受けて日本でも本格的なドローンレースの開催が増えています。こういったレースのコース上にはゲートやポール等の障害物が設置されこれらを回避しながら飛行する操縦技術が競われるのが一般的です。当然通常のレースではこれらの障害物に対して操縦者はなるべくギリギリの距離を飛行しようとします。これらレースは多くの場合主催者等によって飛行区域への立ち入り禁止等、安全管理を十分行った上で開催されますが、これら障害物等が「物件」に該当するとなるとこういったドローンのレースやその練習を行う場合、その都度15日前までに参加者全員の個人情報と使用する機材の詳細とともに申請し承認を受けることが必要となります。これは非効率で想定されるリスクに対して求められる手続きがあまりにも煩雑であり、今後世界的に発展が見込まれるドローンレースの分野においてその競技の実現を著しく制限し、国際的にも大きなハンデキャップを背負うこととなります。

また、その他30m以上という距離の制限は橋梁や建物の外観の点検等の業務利用や写真や動画の撮影においても、その可能性を著しく制約するものであり到底受け入れられるものではありません。申請により実現可能といっても現在提示されている15日以上という条件を考えれば業務や利用の即応性に欠け現実的にそういった利用を行うのは不可能ともいえる状態になると思われます。

本項目については規定の距離を3〜5m程度とし、距離の起点となる対象を「同意のない他人」や「他人が所有または管理する物件」と限定するなどの適用条件を示す必要があると考えます。

 

(意見3/5)

「無人航空機の飛行に関する許可・承認の申請・審査要領案」に対する意見

 

<申請書の提出期限>

申請書の提出期限(飛行開始予定日の15日前までに提出)が早すぎます。無人航空機は技術的にもまだ成熟しておらずその利用方法も定まっていない領域ですが、柔軟な利活用や技術開発の推進を考える上で15日前という申請の期限は早すぎ、技術開発や利活用の機会を大きく阻害する要因となります。事務的な手続き等を考えるとせめて2日から数日程度とすべきと考えます。

 

<許可・承認の回答期限>

申請書に対する許可・承認に関する回答期限が示されていないことは利用者に不透明なリスクをもたらします。前項のとおり申請については期限が定められているのに対して、許可、承認等の回答に関する期限が設定されていません。今後の技術開発や利活用の機会において飛行に関する許可・承認や是正のための要否の確認に時間を要することは、関連する分野の技術開発や利活用の可能性を大きく阻害する要因となります。申請に対する回答の期限について即時(0日)から最大1日(営業日)程度を目安に設定すべきと考えます。

 

<申請に緊急を要する場合>

緊急を要する申請については電子メール、 ファクシミリによる申請が可能とされていますが、その条件として示されている「その他特に緊急を要する場合」にの基準が明確ではありません。申請者側の都合で緊急を要する場合でも電子メールやファクシミリによる申請が可能となることが望ましいと考えます。

 

<許可等に係る基本的な基準>

許可等に対する基準として示された内容が特定の製品等を想定しているように見受けられ不自然な偏りがあるように思われます。4-1-1最大離陸重量25kg未満の無人航空機には玩具等の軽易なマルチコプターも含まれますが「特別な操作 技術又は過度な注意力を要することなく、安定した離陸及び陸着ができること。」「特別な操作技術又は過度注意力を要することなく、 安定した飛行(上昇、 水平方向の飛行、ホバリング(回転翼無人航空機に限る。) 、下降 )ができること。」などが示されており一部の操縦補完機能が搭載されているような製品のみを対象として想定しているように読み取れます。このような機能を持っている製品はごく一部であり、また玩具等の軽易なマルチコプターやレース競技用等スポーツタイプのマルチコプターなどにはそういった機能を搭載していない機器も多く、その場合であっても十分な操作技術と注意力を持って操縦をすれば安全な飛行が可能となります。一方、ここで想定されるような自動操縦もしくは操縦の補完等の機能は誤動作等によって却って危険な状況を生ずることもあり、一律にそういった機能の利用を許可の前提として要求することには違和感があります。

この基準に対して「ただし、操縦者の技能等、安全確保 のため対策等とあわせて総合的に判断し、地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。」との記述がありますが、このような特定のタイプの機器を想定した記述があることでその内容について許可の判断が偏ることが懸念されます。

 

<密集地域上空飛行のため基準>

密集地域上空飛行のため基準の例示が不適切です。

5-2(1)において「無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、次に掲げる基準に適合すること。

a) 機体について、物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。

当該構造の例は、以下のとおり。

・プロペラガード 等」

との記載がありますが「第三者の上空で無人航空機を飛行させない」対策と「物件に接触した際の危害を軽減する」対策が混同されているように見えます。人又は家屋の密集 している地域であっても塀に囲まれた私有地等で小型の無人航空機を低い高度で飛行させるような場合など「第三者の上空で無人航空機を飛行させない」対策を十分に取ることは可能です。またそのような場合において物件に接触したとしても物件が自身の所有物であり危害を受容可能な場合ついてまで制限を要求する必要はないと考えられます。「5-2 人又は家屋の密集している地域の上空における飛行のための基準」となっていますが「人又は家屋の密集している地域」の設定自体は広範囲であり、実際に人や物件の上空を飛行することなく危害を及ぼす可能性のない場合についてまで「物件に接触した際の危害を軽減する構造 例プロペラガード」を一律に要求する必要はないと考えます。本項の記述全体について人に対する危害予防の観点と物件に対する損害の軽減に関する記述が混在しており当該記述は不要であると考えます。

 

(意見4/5)

<第三者の上空で無人航空機を飛行させる場合の基準>

第三者の上空で無人航空機を飛行させる場合の基準の指定が不適切です。

5-2(2)において25kg未満の無人航空機を第三者の上空で飛行させる場合の基準を示していますが、バッテリーの二重化、GPSの利用、パラシュートの搭載等、特定のタイプの製品や必ずしも一般的ではない偏った機能の利用が想定されています。25kg未満の無人航空機には小型軽量の機体も含まれますがこういった機能を装備することでさらに機体の重量が増したり不具合が発生する可能性も高くなり状況になり、逆に危険な状態を生み出すことになります。軽量な機体を使用し第三者上空での滞空を極力回避するなどの工夫により安全を確保することも可能であり、発展段階にある技術について、このような特定機能の使用を規定することは現時点では時期尚早と考えられます。

特に「イ)飛行させようとする空域を限定させる機能を有すること。例としてジオフェンス機能」が基準として示されていますが、すでに第三者の上空を飛行させる前提においてこの機能を要求する根拠が不明確です。また上記でも述べているように第三者上空の飛行においてGPS等の機能の有無と飛行安全の関係性が不明確です。

5-2(3)では25kg以上の無人航空機を第三者の上空で飛行させる場合の基準が示されていますが、こちらには、バッテリーの二重化、GPSの利用、パラシュートの搭載、ジオフェンス機能などの機能要件が示されていません。より重量が大きくリスクも大きい25kg以上の無人航空機に対して要求していない機能要件をよりリスクが少なく玩具等の無人航空機も含まれる25kg未満の無人航空機に対して要求しているのは不自然でありその必然性が不明確です。今後の技術発展の余地や様々な形での対策を可能とするために25kg以上の無人航空機と同様にこういった個別の機能上の要求はあまり具体的に定義しないことが望ましいと考えます。本意見については同様の記述である5-3(2),5-3(3)にも対しても適用されます。

 

<不適切な表現>

「機体に設置されたモニター」との表現が不適切です。以下の記述について一般に機体外の様子を監視するための方法については映像による監視と解釈しましたが、この場合機体に搭載する設置する機器については「モニター」よりは「カメラ」という用語を用いることで表示に用いる「モニター」との混同が避けられるかと思います。

 

「5-4 目視外 飛行の ため基準 (法第 132 条の2第2 号関係)

(1)機体 について、 次に掲げる 基準 に適合すること。

・自動操縦システムを装備し、機体に設置されたモニターにより機体外の様子を監視できること。」

 

<人又は物件近くでの飛行のための基準>

人又は物件近くでの飛行のための基準として示されている内容の記述に不整合が生じています。

「5-5 地上又は水上の人又は物件との間に所定の距離を保てない飛行のための基準」において「無人航空機の落下による第三者に対する危害を防止するため、第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、次に掲げる基準に適合すること。」について「人又は物件」の場合の条件には物件のみが該当する場合があるにもかかわらず「第三者の上空」を想定している安全対策が一律に強制されるのは記述に整合性がないと考えられます。

その一方で「第三者の上空で無人航空機を飛行させないよう、」と書いているにもかかわらず「a)機体について、物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること。」が書かれていてさらに記述が整合していません。プロペラガードは主に人に対する危害防止の意味合いが大きく物件への接触した際の危害軽減という意味では物件の性質により必ずしも必要でないことも考えられます。

またドローンレース等では主催者等が各種安全対策を施した上でコース上にゲートやポールなどの「物件」を設置することがあります。これらの「物件」はドローンによって衝突されたりすることも考慮した上で設置していますのでそれらに対する危害防止については特に必要ない場合が多いと考えられ、ここに示された基準を一律に適用する必要がないものと考えられます。第三者の上空を飛行させる場合の対策と物件の上空を飛行させる場合の基準を分けて記述し、また物件については第三者が所有または管理する物件について同意なく上空を飛行する場合などの条件を明記する必要があると考えます。

 

<無人航空機の飛行に関する 許可・承認申請書>

氏名及び住所欄が小さく「印」の記述の位置は住所よりも氏名の記載位置に近づけた方が記入がしやすいと考えます。

 

(意見5/5)

<パブリックコメント募集の再実施>

本「無人航空機の飛行に関する許可・承認の申請・審査要領案」については、現在のマルチコプターやラジオコントロール機に関する技術的動向や市場の動向、またその利用の実態について十分踏まえた内容とはなっていません。また各項目の記述にムラがあったり、文書内で記述内容が整合していない、要求している基準のバランスが悪い箇所があるなど記述を大きく見直す必要があります。その修正には様々な形の対応が可能なものもあり、修正案として出されるものが必ずしも適切なものではない可能性があります。そこで本パブリックコメントを受けた修正案に対してさらに広い視野からのレビューが必要となると考えられ、再度パブリックコメントの機会を設けることが適当と考えます。

 

以上、ご検討のほどどうぞよろしくお願いします。