急な動作の直後に制御不能になるESC desyncについて



ロールターンやフリップなどで激しい動作を行った直後にモーターの回転がおかしくなり制御不能になるESC desync(ESC timing desynchronization)という現象に遭遇しまたしたので記録としてまとめておきます。

今後同様の現象に遭われる方がいらっしゃるかわかりませんが何らかの場合の参考になれば幸いです。

石垣島でのレースに向けて手持ち部品を組み合わせて機体を準備をしテストフライト兼PIDチューニングを行った際にこの現象が発生しました。準備に時間が取れなかったため買い貯めしてあった古いパーツを使っていますので現在の最新のパーツ状況とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

ゆっくりと飛行している分には何も問題がなくスムーズな飛行でした。PIDチューニングのロールのP値調整のために急激なロールでの切り返しなどをして振動の発生具合を確認していた際に、不意にモーターの回転がおかしくなり制御不能のロールスピンに陥り墜落することが数回発生しました。また、ロールフリップなどを試した際にも同様の現象が見られました。

この際の状況をYouTubeにアップしましたのでご確認ください。

最初は受信機の電波ロストなどを疑いましたが通常飛行では症状が出ませんので、急激な機体動作がなんらかの影響を及ぼしているのだと考えました。帰宅し同様の症状のレポートがないか英語で検索して見て回ったところ、min throttle(ミニマムスロットル)の値が低い場合に急激な動作などでモータ出力を下げる制御が入った場合にモーター出力がmin throttleまで下がり、風のパワーにプロペラの回転が負けて失速してしまうという解説がありました。確かに私はmin throttleはなるべく低い方が良いんだとなぜか思い込んでしまっていてモータータブでの出力チェックでモーターが安定して回る一番低いギリギリの値を設定しており、その可能性がありました。ということでmin throttle を1015だったものを1050まで引き上げ様子をみることとしました。

翌日min throttle を高くした状態で何度かハードターンを決めてみたところ昨日と違って墜落をするようなことがありませんでした。この際はエアモードをオフの状態でテストしていました。前日はエアモードON/OFFをあまり意識していなかったため実はエアモードが悪影響を及ぼしていた可能性もありました。そこで次にエアモードをONにして飛行してみたところ見事に墜落が再現されてしまいました、、(泣)。つまりmin throttleの値(だけ)が原因ではなくエアモードがなんらかの影響をもたらしている可能性が確認されました。この日は10分ほどしか飛行時間が取れなかったため結局問題の原因がわからず持ち越しとなりました。

自宅に帰ってさらに調査を進めると激しい機体動作の後に制御不能になるという症状が昨年6月頃よりいくらか確認されており、ESC desyncというキーワードが浮上してきました。ESC desyncはブラシレスモーターの電流制御のタイミングとローターの磁石の位置との関係がずれることによってモーターの回転が不安定になる現象で、急激なモーター出力の変化をESCのファームウェアがうまく処理仕切れない場合に発生します。

今回私が使用していたESCはDYSのXM30AだったのですがBLHeliとの組み合わせにおいてこの現象が頻発しているようでした。この現象を発症している多くの方がモーターの回転方向をBLHeli SuiteからReverseにする設定をしていたようで、ReverseをやめてモーターESCの結線の入れ替えで回転方向を決定しReverseをNormalに戻すことでESC desyncを解消できたという報告が多数ありました。(一方で入れ替えてもダメだったという報告もありました。)

とにかくESC desyncの解消法についていろんなところに書かれている情報を整理すると以下のようになります。

1 BLHeliでモータの回転方向をReverseにしている場合はNormalに戻しモータの結線で回転方向を合わせる。(3本のうちの任意の2本を入れ替える。)
2 min throttleの値を大きめにする
3 ESCのstartup powerを下げる

これらを全て実施したところ見事ESC desyncの状態は発生することがなくエアモードも安心して使用できるようになりました。結局上記1のモーターのReverseをやめることが一番のポイントだったのではないかと思います。これまで私はモーターを購入する際は全てCWを購入し2番,3番モーターをBLHeliでReverseに設定をしていたのですが、このようなソフトウェア制御の影響が生じる場合があることがわかりましたので、今後はモータの結線を入れ替えるようにしたいと考えます。

今回使用した主要部品及びファームウェアは以下の通りでした。

FC: SP Racing F3 + Betaflight 3.1.6
ESC: DYS XM30A + BLHeli14.9
Motor: Racerstar Racing Edition 2205 BR2205 2600KV CWx4