ドローンFPVで使用する周波数利用の規制緩和について

FPV Racing


現在、米国、中国、フランスなどを中心にドローン(主にマルチコプター)の開発と活用が急速に進んでいます。ドローンの産業利用の側面が取りあげられ政府の規制等にもいくらか産業での利活用のための対応が検討されていますが、その一方で産業面以外の側面が軽視されているようにも見受けられます。

ここまでのドローン技術の発展と普及を担ってきたのはホビーを中心とする非産業的な市場であり、その技術的な発展や進歩についてもオープンソースコミュニティやホビイストによる技術開発など産業分野以外からの貢献によるところが大きいと言えます。

ドローンによる産業分野の市場が立ち上がるまでの段階でホビー等、非産業領域における市場の拡大と技術発展は、本格化するドローン関連の市場活性化や競争力強化において重要な役割を果たすと考えられます。

今回可決成立した航空法の改正によって、人口密集地域の飛行や夜間の飛行が一律に禁止となったことは、産業利用における届出制度があるとしても上記のような非産業領域での利活用の側面およびその市場にとって大きな阻害要因となり、一刻も早く法律を改正し規制を緩和すべき事態であると考えます。

一方でドローン利用に関する電波の利用条件において日本が海外に対して大きく制約される状況として、ドローンに搭載されたカメラからの映像伝送に広く用いらている周波数帯の利用に対して既存の日本のアマチュア無線の制度が適用されるため柔軟に利用することができないということが挙げられます。

具体的には海外でドローンに搭載されカメラ映像の送信用として5.8Ghz(他に1.2Ghz, 900Mhz帯などもあります)の送信機が使用されています。(他にも2.4Ghz帯でのデジタル伝送が用いたものがありますが遅延が大きく実用性や安全性に限界があるためここでは対象としないものとします。)海外のドローンのホビー利用ではこれらの映像を用いてドローンを操縦するFPV(First Person View)という方式が注目されており、これを利用した高速ドローンのレースや空撮への応用などが行われています。これら機上のカメラからの映像を利用することで、直接の目視だけの飛行に比べドローンを正確に飛行させることができるようになり、より安全にドローンを飛行させることが可能となります。

ところがこのFPVの映像伝送を日本で使用するためにはアマチュア無線の資格が必要であり、機器について例え過去に同じ機器で申請をしている人がいても個々に設計図面や仕様を提出して無線局申請をせねばならずドローンでのFPV利用の大きな障害となっています。また海外からの訪問者やドローンレースの選手などがこのような手続きを行うことは実質的に不可能となっています。他にも手続きをとったとしても使用がアマチュア無線の位置付けとなるため商用利用ができずプロの写真や映像撮影等に利用することができないという制約もあります。米国においてもこれら送信機の利用にはアマチュア無線の資格が必要ですが包括的な免許制度のため個別の無線局の申請は不要であり日本に比べれば簡単な手続きでの利用が可能です。

そこでドローンからの映像伝送に利用する送信機については一定の条件を満たす機器そのものを機種別の登録制(技適よりも簡単な現在のアマチュア無線の開局申請と同等の手続きで)として、すでに誰かによって登録確認された機器については無免許あるいは簡単な届出で利用できるよう規制緩和することを提案したいと思います。対象となる周波数は他の電波利用との調整が必要ですがなるべく多くの機器の同時利用が可能なように利用可能な周波数帯を調整することが望ましいでしょう。また用途についても商用利用を可能とすることを提案したいと思います。
実際これらの目的に利用されている機器はほとんどが5.8Ghz帯の600mW以下の送信機であり、電波の性質上到達距離もそれほど大きくないことから他の電波利用への影響は小さいと考えられます。同じドローンのFPV利用者の混信については利用者が十分配慮していく必要がありますが、これらを無免許あるいは簡単な手続きで利用できるようにするだけでドローンの利活用の範囲や可能性は大きく広がると考えられます。特にFPVドローンを使ったレースは米国やヨーロッパなどでも注目されており今後、プロスポーツとして展開することも検討されています。FPVドローンのレースでは単純に操縦技術だけではなく機器の工作や通信の利用なども重要な要素となるため、そういった活動に関心を持つ人が増えることで、国としての技術力向上やドローンの産業化にも大きく寄与するものと考えます。